当社製品における不適切な検査等に関する再発防止策について

2018年11月22日
日立化成株式会社

日立化成株式会社は、当社製品の一部における不適切な検査等の判明を受け、外部の専門家等から構成される特別調査委員会を設置し、その原因究明と再発防止策の検討を進めてまいりました。
2018年11月20日に当社は、特別調査委員会より調査報告書を受領し、2018年11月21日開催の取締役会において下記の再発防止策を決議しましたので、お知らせいたします。
今後当社は、再発防止策を着実に実行し、当社グループにおけるガバナンスの強化ならびに品質保証体制の改善を図り、ステークホルダーの皆様の信頼回復に全力を挙げて取り組んでまいります。

1. 不適切な検査等の根本原因

特別調査委員会による調査報告書では、不適切な検査等の根本原因として、大きく以下の4項目を指摘されています。

  1. 1. 全社的な組織風土(品質に対する過信、甘え等)
  2. 2. 現場における品質に対する意識の欠如(品質保証部門の役割の誤認等)
  3. 3. 品質保証の体制整備が適切に行われていなかったこと(組織設計の不備等)
  4. 4. 不適切な表示の予防および発見体制が不十分であったこと(リスク管理体制の不備等)

2. 再発防止策

特別調査委員会からの根本原因ならびに再発防止策に関する提言を踏まえ、以下の再発防止策を策定し、今後これら施策を着実に実行してまいります。

 

経営陣における品質重視の姿勢の明確化、ならびに社内意識改革への率先した取り組み

経営陣は、今回の不適切な検査等の問題が広範囲かつ長期に亘り行われていたことを深く反省するとともに、品質保証が重要な経営課題であることを再認識し、お客様ならびに社会の信頼を回復していくため、以下の施策を実行する。

  1. 1. 経営の基本方針の見直し

    当社グループの経営の基本方針に、当社製品・サービスが幅広い分野で社会に貢献していることを認識し、最終製品としてご使用されるお客様まで意識した品質保証責任の自覚を持ち、お客様との仕様等取り決めとそれを遵守すること、ならびにお客様への誠実な対応と健全な関係性を維持することを明記する。

  2. 2. 継続的なトップメッセージの発信

    社長は社内外に向け、安全や、品質保証を含むコンプライアンスが全ての活動に優先するとのメッセージを継続的に発信する。

    経営陣は、従業員との継続的な対話を通じ、特に品質保証の重要性についての社内の意識改革に率先して取り組む。

    さらに、事業部長、事業所長、グループ会社社長は、お客様視点で物事を判断することの重要性を、日々の対話を通じ繰り返し全従業員に周知し、企業文化として定着させる。


当社グループ全従業員の品質保証に対する意識改革
  1. 1. 品質保証に関する教育体系の見直しと啓発活動の強化

    経営の基本方針の改定に加え、全社員の行動指針である「日立化成グループ行動規範」の手引き(ハンドブック)の見直しと「コンプライアンス5則」の改定を行い、定期的な説明会を通じ、理解・浸透を図る。併せて、コンプライアンス教育の重点項目に品質保証責任の自覚、お客様との仕様等の取り決めとその遵守を追加し、講習会や継続的なeラーニングを実施する。

    今回の不適切な検査等の問題は、品質保証部門における製品検査に留まらず、製品開発や営業活動等にも、その発生の原因が認められる。したがって、お客様の仕様等に直接関わる品質保証・営業・開発・製造の各部門に対し、お客様との仕様の取り決めが重要な契約であるとの認識を再徹底するとともに、最終製品をご使用のお客様まで意識した品質保証責任、ならびに契約履行の重要性等について専門教育を行う。併せて、品質保証等の管理者は、日々の業務において、品質重視の姿勢・行動の定着を図る。

    また、現在実施している従業員意識調査の項目に品質保証に関する項目を追加し、全従業員の意識改革の進捗状況を確認する。

  2. 2. コンプライアンス違反関連就業規則の運用強化

    品質保証に関するルール違反の看過が、重篤な仕様書等の違反の見逃しに繋がったとの認識の下、コンプライアンスの徹底・強化を目的に、会社としてルール違反を許容しないことを明確に示すとともに、就業規則を見直し、透明性のある運用を図る。


品質保証体制の抜本的な改善と基盤強化
  1. 1. CQO(最高品質責任者)の配置と品質保証本部の新設

    当社グループは、現状、機能材料・自動車部品・エネルギー・ライフサイエンスの4事業本部に品質保証部門を設置し、各事業本部全体の品質保証業務を推進する一方、各事業所ならびに各グループ会社に設置した品質保証部が、各拠点で製造する製品の品質保証やお客様の仕様との整合性を担保する体制となっている。しかしながらこの体制では、品質保証の全体統制や、各事業所ならびに各グループ会社の品質保証部の独立性に課題がある。品質保証体制のガバナンスを強化するため、今後早急に以下の体制見直しを推進する。

    社長直下にCQOを配置し、CQOは当社グループ全体の品質ガバナンス活動を統括する。その傘下にCSR品質保証部と4事業本部の品質保証部門を統合し、品質保証本部を新設する。併せて、各事業所の品質保証部は、新設する品質保証本部の傘下に置く。また、品質保証本部は、各グループ会社の品質保証部門を統括し、当社グループ全体での品質保証体制を構築する。これにより、業績に直接責任を負う営業・開発・製造・事業部門を第1のディフェンスラインとし、品質保証本部と品質保証部は、これらの部門から独立した組織として、内部統制における第2のディフェンスラインとして位置付ける。

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    品質保証本部と各製造拠点の品質保証部は、以下の業務を担当する。

    [品質保証本部の役割]
    • 品質マネジメントシステムの健全性の監視と是正
    • 品質に係るプロフェッショナル育成のための教育体系の整備と実施
    • 品質啓発活動の企画・推進(コンプライアンス教育含む)
    • お客様と取り決めた製品仕様遵守状況の確認と改善指導
    • 製品仕様ならびに4M(Man、Machine、Material、Method)変更管理における営業・開発・製造・調達部門への是正指導
    • 品質リスクアセスメント活動(人財・検査設備の充足状況他)
    • 品質委員会の運営

    [各製造拠点の品質保証部の役割]
    • 製品開発ならびに量産時におけるお客様と取り決めた製品仕様の評価・確認・是正
    • 4M変更時における品質保証の評価・確認・是正
    • 品質保証に関わるお客様への対応
    • 不良原因分析・対応

    2. 品質委員会の新設

    お客様と取り決めた仕様の遵守と品質向上を目的に、CQOを委員長とし、営業・開発・製造・事業部門等の関連部門長を構成員とする品質委員会を設置する。また、第三者の視点を入れるため、品質コンサルタントの導入等を検討する。

    品質委員会は、各事業所ならびに各グループ会社における品質マネジメントシステム、製品仕様ならびに4M変更管理の遵守状況、品質リスクアセスメントから抽出した主要課題を審議し、品質目標の設定と達成に向け、人財・設備等の最適化を推進する。併せて、品質保証本部から営業・開発・製造・事業部門等の関連部門への品質関連是正項目を審議し、品質保証責任の確実な遂行と、品質向上を図る。

    品質委員会は、品質保証を維持するための人財・設備等の投資、ならびに営業・開発・製造・事業部門等の関連部門への是正指導を行う。

    3. 人的関与を排した品質保証システムへの移行

    今回の不適切な検査等については、各製造拠点における品質管理並びに製品保証システムの中で、検査データが自動収集できていれば、防げた事案も多い。

    品質保証本部内にタスクチームを発足し、人的関与を極力排し、検査データの適切な生成・管理を自動的に行えるシステムを構築し、各製造拠点にて順次導入を進める。

    4. 品質に関わる経営資源の投入

    品質保証をはじめ、品質管理への経営資源の十分な配分ができていなかったことが、今回の不適切検査問題の一因であるとの認識の下、必要な経営資源を投入する。

    具体的には、品質保証本部主導で推進する品質リスクアセスメント活動と品質監査により、人財・設備等の必要性、定期的に品質保証に関するリスクを洗い出し、品質委員会に答申する。品質委員会はこれを審議し、必要な経営資源の確保を図る。

品質保証に関わる監査ならびに内部通報制度の強化

お客様と取り決めた製品仕様を遵守するため、営業・開発・製造・事業部門における内部統制上の第1のディフェンスラインに加え、以下の第2、第3のディフェンスラインを設けるとともに、内部通報制度の実効性を向上させる。

  1. 1. 品質保証本部による品質保証プロセスの検証実施(第2のディフェンスライン)

    品質保証本部は、各事業所ならびに各グループ会社にて開発・製造する製品について、定期的に以下の項目の監査を実施し、その結果を品質委員会に報告する。

    • お客様と取り決めた製品仕様の遵守状況(開発段階、4M変更を含む)
    • 品質保証に関する業務規程の遵守ならびに検査データの整備状況
  2. 2. 監査室における品質保証本部に対する監査の実施(第3のディフェンスライン)

    監査室は、品質保証本部が行う業務の遂行状況について、その品質保証プロセスの検証の内容も含め、中立・独立の立場から監査を行う。

  3. 3. 内部通報制度等の強化

    内部通報制度は現時点でも秘匿性を担保し、当社のコンプライアンス部門または外部弁護士へ直接通報できるよう運営しているが、現状ハラスメントに関する通報が中心となっており、また多くの従業員は通報制度を認識しているものの、目的、運用実態を誤解しているケースも多く、十分な活用ができていない。したがって、再度、内部通報制度の目的、通報者保護の仕組み、通報によって改善が図られた事例(契約・法律等に違反する行為など)を明示して全従業員の理解を深める。これに加え、外部弁護士の協力を得て、経営陣は内部通報制度の有効性向上に取り組んでいく。また、ネガティブな情報が当たり前に報告できる企業風土醸成に向け、管理者への教育を強化する。

 

以上

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ブランド・コミュニケーション部 広報グループ